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金属積層造形とは?原理、メリット、材料、用途、設計上の注意点などを徹底解説

2025/02/01

金属積層造形(英語:Metal Additive Manufacturing)は、金属粉末をレーザーや電子ビームなどの熱源で溶融・凝固させ、一層ずつ積み重ねていくことで三次元形状の部品を製造する技術です。金属3Dプリンティング(Metal 3D printing)と呼ばれることもあります。

従来の切削加工では難しかった複雑形状・複雑構造の部品を造形できるため、航空宇宙、医療、自動車、産業機械など、幅広い分野で活用されています。

今回は、金属積層造形について基礎から丁寧に解説いたします。

金属積層造形とは?その原理と特徴

金属積層造形は、AM(Additive Manufacturing:付加製造)技術の一種です。

3D-CADデータに基づいて、一層分の断面形状を金属粉末層に照射し、溶融・凝固させることで一層ずつ立体的な形状を積み重ねていきます。

金属積層造形の主な方式

  • 粉末床溶融結合方式(Powder Bed Fusion:PBF): レーザービームや電子ビームで金属粉末層を溶融・凝固させる方式。高い造形精度と多様な材料に対応できる。
  • 指向性エネルギー堆積方式(Directed Energy Deposition:DED): 金属粉末またはワイヤーをノズルから供給し、レーザーやアークなどの熱源で溶融・凝固させる方式。大型部品や肉盛りに適している。
  • バインダージェット方式(Binder Jetting): 金属粉末層にバインダーと呼ばれる接着剤を噴射し、未焼結の状態で形状を造形する方式。高速で大型部品の製造に適している。
  • シート積層造形方式(Laminated Object Manufacturing:LOM): 金属シートをレーザーなどで切断し、積層していく方式。大型部品の製造に適している。
  • 液滴吐出方式(Liquid Metal Jetting:LMM): 溶融した金属を液滴として吐出し、積層していく方式。高速で高精度な造形が可能。

金属積層造形のメリット・デメリット

金属積層造形のメリット

  • 複雑な形状の部品を一体成形できるため、組立工程を削減できる
  • ネットシェイプ・ニアネットシェイプが可能
  • 鋳造やMIMなどと異なり、金型・砂型を必要としない
  • 形状自由度が高く、既存工法の限界を超えた軽量化や高機能化を実現できる
  • 材料の歩留まりが高い

金属積層造形のデメリット

  • 造形時間が長い
  • 造形材料の種類が限られている
  • 表面粗さ・密度・強度が問題となることがある
  • 数万~数十万の量産には向かない

金属積層造形で使用できる金属材料の種類と特性

金属積層造形で使用される造形材料ご紹介します。

主な造形材料

  • ステンレス鋼(SUS316Lなど):強度、耐食性、耐熱性に優れる
  • チタン合金:軽量で高強度、生体適合性も高い
  • アルミニウム合金(AlSi10Mg):軽量で加工性に優れる
  • ニッケル合金:耐熱性、耐食性に優れる
  • マルエージング鋼:高強度、高靭性を持つ
  • インバー:セラミックスに匹敵する低熱膨張性を持つ

金属積層造形の主な用途と事例

金属積層造形とは?原理、メリット、材料、用途、設計上の注意点などを徹底解説|金属3Dプリンタ工法転換ラボ

金属積層造形は、様々な分野で活用されています。

金属積層造形の主な用途

  • 航空宇宙:ジェットエンジン部品、ロケット部品
  • 医療・歯科:人工関節、インプラント、歯科補綴物
  • 自動車・輸送機器:エンジン部品、車体部品
  • 産業機器:金型、治具

金属積層造形の具体的な製品例

  • 航空機のタービンブレード
  • 人工股関節
  • 自動車のエンジンブロック
  • ロケットのノズル

金属積層造形の設計上の注意点

金属積層造形では、従来の加工法とは異なる設計上の注意点があります。

主な注意点

  • オーバーハングやブリッジ構造を避ける
  • サポート材を不要とする形状にする
  • 熱応力の考慮
  • 造形時間を短縮するため寝かせて造形すること想定した形状

金属積層造形の今後の展望

金属積層造形は、従来より、強度不足、精度が粗い、造形材料の選択肢が少ない、大型部品を造形できるマシンが少ないなどといった問題が指摘されてきました。

しかし、ここ数年の技術革新により、それらの欠点が解消され、近年では造形+機械加工を一台で行える造形マシンも登場するほか、造形速度の高速化による量産性向上、造形材料の多様化、大型の造形マシンの普及など、今後ますますの発展が予測されます。

主要な金属3Dプリンターメーカーと機種

有名な金属3Dプリンターメーカーとしては、海外のEOS、GE Additive、HPなどが有名です。 国内では、松浦機械製作所、DMG森精機などが金属3Dプリンターを製造しています。

主なメーカー

  • EOS
  • GE Additive
  • HP
  • SLM Solutions
  • TRUMPF
  • 松浦機械製作所
  • DMG森精機

東金属産業の金属積層造形

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当サイトを運営する東金属産業株式会社は、航空宇宙・半導体分野を中心に金属3Dプリンティングの材料開発・試作・量産を行っております。

特にメーカーとの共同開発で豊富な実績があり、長年の経験によって培われたDfAMやトポロジー最適化のノウハウを駆使して工程集約、リードタイム短縮、軽量化、部品一体化など様々な付加価値を提供いたします。

これまで5,000点以上の金属積層造形の試作・量産実績があり、その経験を活かして、切削・研削加工など従来の製造プロセスでは実現困難であった複雑形状や機能性を、金属3Dプリンティングへの工法転換によって実現することをご提案しております。

基本的には、後工程を不要とするネットシェイプ・ニアネットシェイプを目指しますが、要求される面粗度や寸法精度によって後工程が必要になることがあるため、当社では切削、溶接、組立、熱処理、仕上げまでワンストップで対応できる体制を整えております。

さらに、アルミニウム(AlSi10Mg)、ステンレス(SUS316L)、マルエージング鋼、インバーなど様々な造形材料の実績があり、チタン、インコネル、銅合金、樹脂なども協力企業と連携して対応可能です。

切削加工品の工法転換や、部品開発・試作段階における金属積層造形をご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。

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