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金属積層造形は、AM(Additive Manufacturing:付加製造)技術の一種です。
3D-CADデータに基づいて、一層分の断面形状を金属粉末層に照射し、溶融・凝固させることで一層ずつ立体的な形状を積み重ねていきます。従来の主流である「切削加工」が、大きな金属の塊から不要な部分を削り取る「除去加工」であるのに対し、3Dプリンターは必要な場所にだけ材料を配置する「加法」の考え方に基づいています。
「銅は金属3Dプリンターで造形できるのか?」という疑問を持つ設計者は少なくありません。
結論から言えば、銅を3Dプリンターで造形することは可能です。
かつて銅は、高い熱伝導率とレーザーの反射率の高さから「3Dプリンターでの加工が最も難しい金属」の一つとされていました。しかし、近年では技術の進歩により、純銅から各種銅合金に至るまで、高精度な積層造形が実現しつつあります。
銅は非常に展延性に富む金属であるため、従来の切削加工や鋳造では精密な加工が難しいという側面を持っています。そのため、複雑な形状の部品や内部に空洞を持つ部品を作る場合は、複数の部品を別々に加工し、ロウ付けや溶接によってつなぎ合わせる必要がありました。
しかし、3Dプリンターの場合は、金属粉末を少しずつ積み上げていくため、内部に複雑な形状の部品でも金型なしで「一体造形」することが可能です。
これにより、部品点数の削減や組み立て工程の大幅な省略が実現し、結果として部品の軽量化や製造・開発スピードの飛躍的な向上が期待できます。
銅が持つ最大の特徴は、銀に次ぐ極めて高い「熱伝導率」と「電気伝導率」です。
近代産業において欠かすことのできないこの優れた「物理的特性」と3Dプリンターの「無駄のない自由な形状設計」による相乗効果が注目されています。
近年、SDGsやカーボンニュートラルの観点から、エネルギーの利用効率を高める動きが世界中で加速しています。例えば電気自動車(EV)のモーター部品や、電子機器の熱交換器などの領域において、3Dプリンターならではの無駄のない自由な形状設計と銅の優れた性能を組み合わせることで、従来製品を遥かに凌ぐ高効率な放熱性能や導電性能を実現できると考えられています。
金属3Dプリンターで使用される銅材料は、大きく分けて「純銅」と「銅合金」の2つに分類されます。さらに、材料の供給形態(粉末材料かワイヤー材か)によっても特性が異なります。用途や求める性能に応じて最適な材料を選ぶことが重要です。
| 項目 | 純銅 | 銅合金(CuCrZrなど) |
|---|---|---|
| 主な組成 | 銅単体 | 銅にクロム・ジルコニウム・ニッケルなどを微量添加 |
| 電気伝導性 | 非常に高い | 純銅よりやや低い |
| 熱伝導性 | 非常に高い | 純銅よりやや低い |
| 機械的強度 | 比較的低い | 大幅に向上 |
| 耐熱性 | 低め | 高い |
| 耐摩耗性 | 低め | 高い |
| 造形難易度 | 非常に高い | 比較的容易 |
| 主な用途 | バスバー、電極、ヒートシンクなど高伝導性が求められる部品 | ロケットエンジンノズル部品、海洋環境の耐食性部品など過酷環境用途 |
純銅は、銅本来の高い電気伝導性と熱伝導性を最大限に発揮できる材料です。高電流を流すバスバーや電極、極めて高い放熱性が求められるヒートシンクなどに最適です。
しかし、金属3Dプリンターで純銅を造形する場合、その優れた熱伝導性が仇となります。レーザー等で局所的に熱を与えても、すぐに周囲へ熱が逃げてしまうため、粉末を十分に溶融・凝固させることが非常に難しいという特徴があります。造形難易度は極めて高いものの、技術的課題をクリアし造形に成功すれば、従来の加工品と同等の優れた物性を得ることができます。
銅にクロムやジルコニウム、ニッケルなどの微量元素を添加したものが銅合金です(クロム・ジルコニウム銅:CuCrZrなど)。純銅と比較すると、電気伝導率や熱伝導率はやや低下してしまいますが、その代わりに機械的強度や耐熱性、耐摩耗性が大幅に向上します。
また、純銅よりもレーザーの吸収率が高いため、現在広く普及している一般的なレーザー方式の金属3Dプリンターでも比較的容易に造形することが可能です。高温環境下でも強度を維持しやすいため、過酷な環境で使用されるロケットのエンジンノズル部品や、海洋環境で使用される耐食性部品などに広く採用されています。
材料の供給形態には、主に「粉末(パウダー)」と「ワイヤー」の2種類があります。
粉末材は、パウダーベッド方式やバインダージェット方式などで使用され、非常に高密度で複雑かつ微細な形状の造形が可能です。純銅や銅合金の特性を最大限に引き出せる反面、厳重な粉塵対策や酸化を防ぐための高度な材料管理が求められます。
対してワイヤー材は、主にDED方式(指向性エネルギー堆積法)などで用いられます。粉末材に比べて積層速度が速いため、大型部品の製造や、摩耗した金型などの肉盛り補修に適しています。また、材料の取り扱いが比較的容易でコストを抑えやすいという利点があります。
ここでは銅の造形における主な課題と解決策について詳しく解説します。
純銅は、広く普及している金属3Dプリンターに搭載されている赤外線レーザーのエネルギーを数パーセント程度しか吸収せず、ほとんどを反射してしまいます。さらに、熱伝導率が極めて高いため、局所的に熱を与えても瞬時に周囲へ拡散してしまい、溶融プールを安定して作ることが困難です。
この課題の解決策として、近年では純銅の光吸収率が高い「グリーンレーザー」や「ブルーレーザー」を搭載した新しい3Dプリンターの開発が進んでいます。また、光の反射の影響を受けず、高出力でエネルギー変換効率の高い「電子ビーム方式」を採用することが、現状において純銅造形を成功させる最も確実な解決策の一つとして実用化されています。
銅は酸素と非常に結びつきやすい性質を持っています。造形中の高温状態で酸素と反応して酸化銅が生成されてしまうと、部品の強度や導電性・熱伝導性が著しく低下し、内部にクラックが発生する原因にもなります。
これを防ぐため、レーザー方式のプリンターでは、造形チャンバー内をアルゴンや窒素などの不活性ガスで充填し、酸素濃度を極限まで下げた環境下で造形を行います。一方、電子ビーム方式の場合は、電子線を照射するためにそもそも「真空環境下」で造形プロセスが進行するため、酸化のリスクを根本から最小限に抑えることができ、非常に高純度な銅部品を得ることが可能です。
金属を溶かして固めるプロセスでは、加熱による膨張と冷却による収縮が繰り返されるため、部品内部に「残留応力」が蓄積し、反りや割れを引き起こします。
電子ビーム方式では、造形エリア全体を高温で予熱してベースの温度を上げることで、溶融時と冷却時の温度差を小さくし、この熱応力を大幅に緩和できます。しかし、予熱の副作用として、造形物の周囲を覆う未使用の粉末が固まってしまう「仮焼結」という現象が起きます。特に内部に複雑な流路を持つ部品の場合、この仮焼結体を取り除く後処理が難しくなるため、設計段階での工夫(粉末排出用の穴を設けるなど)や、必要箇所だけを局所的に予熱する最新技術の開発が求められています。

こちらは金属3Dプリンタで造形したペン立てです。
お客様より、「今までに無いおしゃれな銅製のペン立てをつくりたい」とのことで、当社にご相談がありました。
当社では、3Dプリンタだからこそできる特異な形状をご提案しました。本製品は、一般に造形が難しいとされる銅合金を採用している点が特徴で….
当サイトを運営する東金属産業株式会社は、金属3Dプリンタにおいて、航空宇宙や産業機器等の幅広い業種向けに、そしてギヤ、ノズル、フレーム、インペラ等、多種多様な形状の部品向けに、累計5,000点以上の造形実績がございます。

そのため、金属3Dプリンタの強みだけでなく限界までも熟知しており、塑性加工・切削などからの工法転換により期待できる効果や起こりうる問題点、そして金属3Dプリンタが得意とする形状についてもノウハウがあるため、設計(DfAM)段階でのご提案を積極的に行っております。
既存工法のコスト・納期や形状限界にお困りの方、金属3Dプリンタへの工法転換によりどれくらい改善効果が期待できるのか知りたいという方は、お気軽にご相談ください。
