目次

近年、腐食環境の厳しさが増す中、材料には高い耐食性だけでなく、強度や加工性、溶接性まで含めた総合的な性能が求められています。
MAT21は、そうした要求に応える高耐食ニッケル基合金として注目されている材料です。
本記事では、MAT21の基本情報から特長、用途、競合材料との比較までをわかりやすく解説します。
下記記事も併せてご覧ください。
・AlSi10Mgとは?特徴から物性、3Dプリンターでの活用メリットを徹底解説!
・インバー36・スーパーインバーの金属積層造形(3Dプリンティング)完全解説
・金属3Dプリンターで使用される「マルエージング鋼」とは?特性・メリット・用途を徹底解説
・Aheadd®CP1とは?モータースポーツ分野で注目される高性能なアルミ系3Dプリンタ造形材料

MAT21は、ニッケル基の高耐食合金です。
過酷な腐食環境を想定して設計されており、一般的なステンレス鋼では対応が難しい場面で検討される材料です。
特に、酸性環境や塩化物を含む環境など、腐食が進みやすい条件で性能を発揮しやすい点が大きな特長です。
耐食性を重視しながら、実用面でも使いやすいバランスを備えていることから、幅広い産業分野で注目されており、金属積層造形の分野でも注目されています。
例えば、図のような微細なフィルターやスリット、複雑な内部流路を持つマルチノズルやシャワーヘッドも、金属3Dプリンター技術なら高精度に一体造形が可能です。優れた耐食性を持つ反面、加工が難しい「難削材」とされるMAT21ですが、積層造形とかけ合わせることで、従来の切削加工では困難だった複雑な製品製造を実現します。
MAT21の最大の特長は、高い耐食性です。
酸性環境や塩化物環境など、腐食が起こりやすい条件下でも、材料の劣化を抑えやすいとされています。この特性により、設備の寿命確保やメンテナンス負荷の低減に貢献しやすくなります。
腐食が原因で発生するトラブルを抑えたい現場にとって、有力な選択肢となる材料です。
MAT21は、一般的なオーステナイト系ステンレス鋼と比べて、より高い強度が期待できます。
そのため、部品の薄肉化や軽量化を検討する際にも、選定候補になりやすい材料です。
強度と耐食性を両立できる点は、設計の自由度を広げるうえでも大きなメリットです。
過酷な環境でも、必要な機械的性能を確保しやすいことが評価されています。
③加工性・溶接性の実際
MAT21は高強度・高耐食であるがゆえに、一般的なステンレス鋼と比較すると切削加工が難しい「難削材」に分類されます。工具摩耗が進みやすく、加工時間やコストが増大しやすい点は、実際の製作現場で無視できない課題です。
ただし、インコネルやハステロイ系など他の高耐食ニッケル基合金と比較した場合には、溶接性・加工性のバランスに優れているとされ、ニッケル基合金の中では扱いやすい部類に入ります。
こうした「難削材ゆえの加工課題」を解決する手段として、後述する金属3Dプリンタ(積層造形)の活用が注目されています。
MAT21は、長寿命化や保守性の向上を目指す設備で特に価値を発揮しやすい材料です。
腐食による交換頻度を抑えられれば、稼働停止リスクの低減にもつながります。
設備の安定運用が重要な分野では、材料の信頼性がそのまま品質や生産性に直結します。
MAT21は、そうした現場ニーズに応えやすい素材として注目されています。
MAT21の位置づけをわかりやすくするために、代表的な競合材料と比較すると次のようになります。
| 材料名 | 耐食性 | 強度 | 溶接性 | 加工性 | 主な位置づけ |
| MAT21 | 非常に高い | 高い | 良好 | 良(※1) | MA276やMA22と比較しても高い耐食性が期待できる |
| SUS316 (オーステナイト系ステンレス鋼) | 高い | 標準的 | 良好 | 良好 | 汎用的な耐食ステンレス鋼 |
| MA22 (インコネル・ハステロイ系) | 高い | 高い | 良好 | 良(※1) | 酸化性環境に強い耐食合金 |
| MA276(ハステロイ) | 非常に高い | 高い | 良好 | やや難しい場合あり | 厳しい還元性環境向けの定番合金 |
| MA625(インコネル) | 非常に高い | 高い | 良好 | やや難しい場合あり | 高耐食かつ高温環境向け |
MAT21は、MA276やMA22と比較しても高い耐食性が期待でき、ニッケル基合金としての溶接性・加工性もバランスよく備えた材料です。 耐食性を高めながら製造上の実用性も確保したい、過酷な環境での材料選定において有力な選択肢となります。
耐食性が高くても、加工や溶接が難しすぎれば実用化しにくく、逆に扱いやすくても耐食性が足りなければ採用しにくくなります。
MAT21は耐食性・強度に優れる一方で難削材でもあるため、切削加工では製造面の負荷が課題となりがちです。近年はこの課題を3Dプリンタ(積層造形)で補う動きが進んでおり、耐食性と製造実用性を両立させやすくなっている点が魅力です。
化学プラントでは、薬液や腐食性流体にさらされる部品が多く、材料選定が非常に重要です。
MAT21は、配管、バルブ、接液部品など、腐食対策が求められる部位で検討しやすい材料です。
長期使用を前提とする設備では、初期コストだけでなく保守コストも重要になります。
そのため、耐食性に優れたMAT21のような材料は、トータルでの価値が高いと考えられます。
半導体製造装置では、高純度で安定した環境が求められます。
わずかな腐食や汚染が製品品質に影響するため、材料には高い信頼性が必要です。
MAT21は、こうした厳しい条件に対応しやすい高耐食材料として有望です。
腐食対策が重要な装置部材において、材料選定の候補として検討しやすい位置づけにあります。
MAT21は、一般的に機械加工(切削加工など)によって成形されることが多い材料です。
しかし、前述の半導体製造装置用ガスシャワーヘッドのように、多数の穴あけ加工が必要な製品の場合、機械加工では膨大な時間がかかり、製造コストが高騰するという課題があります。
そこで弊社がご提案しているのが、金属3DプリンタによるMAT21の造形です。従来の機械加工から3Dプリンタ造形へと工法を置き換えることで、加工時間を大幅に短縮できるケースがあります。
ただし、製品全体ではなく一部品のみをMAT21に置き換える場合、材料単価や後加工・検査工程などの兼ね合いから、必ずしもトータルコストが下がるとは限らない点には注意が必要です。3Dプリンタ活用によるコストメリットは、部品形状の複雑さや置き換え範囲によって変わるため、個別の製品ごとに見極めることが重要です。
MAT21をはじめとする高機能材料は、航空宇宙・エネルギー・医療・半導体製造装置など、過酷な環境下で使用される幅広い分野への応用が期待されています。特に宇宙関連分野では、軽量化と高い信頼性を両立する部材が求められており、こうした高機能材料が活躍できる領域は今後さらに広がっていくと考えられます。
また、MAT21に限らず、用途や要求特性に応じて最適な材料を選定することが、製品開発の成否を左右する重要なポイントとなります。
東金属産業株式会社では、3Dプリンタ(積層造形)を活用した試作・評価のご相談にも対応可能です。複雑形状の造形や短納期での試作を通じて、宇宙分野をはじめとする多様な業界のお客様の材料選定・開発をサポートいたします。
MAT21は、高い耐食性と強度を兼ね備えたニッケル基合金です。切削加工では難削材としての課題がありますが、金属3Dプリンタを活用することで、その課題を克服しながら複雑形状にも対応できます。
また、競合材料との比較でも、MAT21は「高耐食合金の中でも優れた耐食性を確保しつつ、製造の実用性も妥協したくない」という過酷な現場で特に効果を発揮する材料です。
金属産業株式会社では、3Dプリンタ(積層造形)を活用した試作・評価のご相談にも対応可能です。
MAT21の採用や置き換えをご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

また弊社は、金属3Dプリンティング専業ではなく、祖業であるアルミ鋳造をはじめ、社内において機械加工、製缶加工、組立を行っています。そのため、金属3Dプリンティングという答えありきではなく、製品・部品の用途や要求仕様、ご予算などの諸条件によっては、他工法をご提案する場合もございます。
金属3Dプリンティングに関してご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。
